動物レクチンにより、内在性リガンドの認識など動物細胞にみられるたくさんの多様なグリカン構造の機能の一つを説明できます。 自然界は炭水化物結合の多変性と多様性をつくることでさまざまな機能を生み出しました。 これらの生物学的な相互作用の重要性のうちのいくつかは、レクチンやそのリガンドの自然的もしくは実験的遺伝子変異の結果から、明らかになりました。 確かに、現時点でもシグレックなどまだレクチンの特異性はよくわかっているが、その生物学的な機能がよくわかっていない場合もあります。 そのような場合は、そのレクチンの高発現した細胞種を調べることでその生物学的な機能を予測することができると思われます。  


a) コレクチンとウイルス [4]
コレクチンは、植物レクチンに対応する動物レクチンの一部として、1980年川嵜らにより動物血清レクチンとして報告された(1)。その後1989年イギリスで本レクチンの欠損と、幼児の易感染性の関連が発見され、本レクチンが生理的状態で微生物に対する基礎免疫に関わっている可能性が提唱された。これらの動物血清レクチンは、その内部にコラーゲン様構造とCa++要求性の糖認識領域 (CRD) をもつため、コレクチン(collectin)と銘々されている。コレクチンは、分泌型で血清中に存在するマンノース結合レクチン(mannose-binding lectin=MBL) 、コングルチニン(bovine conglutinin=BKg)、 CL-43(collectin 43) と肺のサーファクタントや羊水中に存在するサーファクタント蛋白 A ( surfactant protein A=SP-A )やサーファクタント蛋白D (surfactant protein D=SP-D)と最近遺伝子がクローニングされた非分泌型と考えられているCL-L1(collectin liver-1)、CL-L2(collectin liver 2)や、膜型CL-P1(collectin placenta-1)などが存在する。  分泌型のコレクチンについて、細胞レベルでの研究の結果、ウイルスの感染抑制、増殖抑制に関するコレクチンの機能については基本的には、3つの方法でウイルスに働いていると考えられる(2)。 1) コレクチンが中和抗体のように結合し、ウイルスが細胞に感染できなくさせたり、感染拡大を抑制する(直接作用)。 2) コレクチンがウイルスやウイルス感染細胞上の複合糖質に結合した後MASPの活性化がおこり、それに引き続いて補体系が活性化され、ウイルス溶解や細胞溶解が引き起こされる(補体活性化を利用する経路)。 3) コレクチンがウイルスやウイルス感染細胞上の複合糖質に結合した後、コレクチン レセプター、補体レセプター、C1qレセプターを介して、貪食細胞にとりこまれる(オプソニン化による排除)。 実際の感染防御を図1で示す。 図:コレクチンによるウイルス感染制御の模式図  実際の生体における役割については、不明な点が多くMBLの欠損症と特定のウイルス感染症との結びつきについては現時点では、はっきりした証拠は得られていない(ウイルス性肝炎やHIVにおいて多くの報告があるが)。個体レベルの実験系ではSP-A, D遺伝子ノックアウトマウスが興味あるデータを示している。つまり従来肺の感染症においてSP-Dが重要な役目を果たしていると、in vitro のデータから考えられていたが、個体レベルではSP-Dは脂質代謝のホメオスターシスに関与し、感染防御にはSP-Aが関与していることが示されている。一方MBLではマウスは2つの遺伝子が存在するため、ダブルノックアウトの実験結果が待たれるところである。しかし最も画期的な報告は、2例のMBL欠損患者への補充療法の有効性を示した結果であろう(3)。注目すべきは2歳の女児のケースで、生後4ヶ月から繰り返す感染症で入退院を繰り返していたが、数回のMBL補充療法でその後3年間健康でいることが報告されており、補充療法の可能性とウイルス感染症などの通常の感染症にコレクチン(MBL)が重要な役割を果たしていることが再確認された。

b) カブトガニレクチンの糖鎖認識機構 [4]
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