1-2 糖鎖の働き・重要性

a) 糖鎖とは?

糖鎖は核酸(DNA)やタンパク質に続く第3の鎖状生命分子とされており、
糖が鎖状に連なったものです。
この糖鎖はタンパク質や細胞の膜を構成している脂質の表面に結合し、その働きを左右しています。
近年ではゲノム、プロテオームに続くグライコームプロジェクトが進められています。
グライコームとはグライコとオームが合体してできた言葉であり、グライコは「糖鎖」、オームは「全体」を表すラテン語です。
つまりグライコームとは、ある生物の持つ全ての糖を網羅したものを言い、
これには単独で存在している糖も、他の物質と複合体を形成している糖も含まれます。
木下研究室では糖鎖の全体像の解明に努めており、このような糖鎖生物学の研究はグライコミクスと呼ばれます。

higetousa

画像;http://www.riken.jp/r-world/info/release/news/2010/nov/frol_01.html より

b) 糖鎖の役割・重要性 [1]
糖鎖の働きは赤血球だけではなく、体中の細胞に存在し、ガンや免疫、ホルモンの働き等にも関与しています。
生体内の糖鎖はアクセスカードリーダーのようなもので、細胞の表面からヒゲが生えたような状態で存在しています。
カードを読み取らせるためには読み取らせるコードと、それを読み取る機械が必要です。この機械にあたるのが糖鎖です。
コードにはどのようなものがあるのかというと、ウイルス、バクテリア、病原体(抗原)など様々なものがあります。
近年では、このアクセスカードリーダーの役割を果たす糖鎖の研究が活発に進められているわけですが、
糖鎖は非常に柔軟であり、環境に依存して構造が変化します。
つまり、このアクセスカードリーダーは温度や湿度、時間によって変化する可能性があるのです。
従って、一般に糖鎖の研究は遺伝子やタンパク質の研究と比較すると非常に困難とされます。

タンパク質は正しい条件でのみアクセスが許されます。
つまり、タンパク質の機能は環境条件によって支配されている糖鎖の立体構造に影響されます。
従って、糖鎖とそれらのタンパク質の機能の重要性が高まってきているのです!!!

一般的に糖鎖の生物学的役割は以下のように大きく 2 つに分けられます。

(1)構造と修飾的性質

(2)他の分子による糖鎖の特異的認識(糖鎖結合タンパク質 (GBPs) を含む)

糖鎖結合タンパク質には 2 つのタイプがあります。

① 内因性 : 同じ生物(生命体)の中で糖鎖を認識する。
・ 細胞間相互作用を媒介する機能をもつ
・ 細胞外分子を認識する機能をもつ
※同じ細胞上の糖鎖を認識する可能性もある。

② 外因性 : 異なる生物(生命体)などから糖鎖を認識する。
・ 病原微生物
・ 毒(毒素)
・ 共生の関係を媒介している分子   など...

この糖鎖認識が対立的な選択力として作用するとその結果、進化的に影響を及ぼすのです!!!

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