2-1 糖鎖の構造


2-1 糖鎖の構造

a) 単糖の構造 [1]
糖鎖は複数の単糖が共有結合して作られています。糖の場合この共有結合をグリコシド結合と呼びます。
単糖にはそれぞれ α、β の 2 種類があります( 図 2.3)。単糖の一般式は、Cx(H20)n n={3, 4, …, 9} で、
大抵は下の図 2.1 のように C1 から名付けられた炭素原子が環状を作っています。単糖には D 型と L 型があります( 図2.2)。
D 型と L 型がどのようにして決められているのかというと、鎖状構造で描いた時、カルボニル基から最も離れた不斉炭素の絶対配置で決まります。
六単糖ならば C5、五単糖ならば C4 の炭素がそれになります。
図 2.2 に示されているのが D 型と L 型グルコースの立体構造ですが、お互いは鏡像関係にあります。ちなみにギリシャ語でD(Dextro)は右、L(Levo)は右という意味があります。
また、D, L の代わりに R, S (ラテン語由来)を使う場合もあります。

figure2.1

図 2.1 炭素に 1~6 の番号が付けられた D 型グルコース (Glycome Informatics [1] 参照)

 

figure2.2

図 2.2 D 型、L 型グルコースの立体構造 (Glycome Informatics [1] 参照)

 

単糖は通常、5 員環か 6 員環で構成されます。それは化学的安定性から、それ以外のものは存在しにくいからです。
5 員環の単糖は 5 単糖(あるいはフラノース)、6 員環の単糖は 6 単糖(あるいはピラノース)と呼ばれています。
このフラノースやピラノースが環状構造を取る時、C-1 炭素が不斉炭素になることで立体異性体が発生します。
この炭素はアノマー炭素と呼ばれ、一般にフラノースやピラノースが他の糖と結合していない状態の時は
ヘミアセタール結合と呼ばれる結合(環状構造を作るときの結合)を生成したり、加水分解したりすることで、鎖状構造と環状構造との間で平衡が存在します。
また、立体異性体同士のアノマーにも平衡が存在します。このそれぞれの立体異性体には、図 2.3 にあるように α-、β- の接頭語が使用されます。

figure2.3

図 2.3 α グルコースと β グルコースの立体構造 (Glycome Informatics [1] 参照)

 

b) 二糖類 ・ 多糖類 [1]
二つの単糖はグリコシド結合によって連結されます。この結合は単糖のアノマー炭素ともうひとつの単糖のヒドロキシ基の間で起こります。
DNA やアミノ酸配列とは異なり、単糖は他の単糖と 2 つ以上連結されることがあります。 2 つ以上単糖が連結されることにより、
これらは枝を作り、木のような構造が作られます。例えば、N 型糖鎖のコア構造は図 2.4 のような構造を取っています。
このコア構造は実際、5 つの単糖から成り立っています。このような構造は図 2.5のようによく表されます。
青い四角形で表されているのが N– アセチルグルコサミン(GlcNAc) 残基、黄緑色の丸で表されているのがマンノースです。
ふたつの GlcNAc の間の結合と β- マンノースと GlcNAc の結合は β1-4 結合で、
マンノース同士の結合はそれぞれ上から α1-3 結合、α1-6 結合で連結されています。

figure2.4

図 2.4 N 型糖鎖のコアの化学構造 (Glycome Informatics [1] 参照)

 

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図 2.5 単糖のシンボルとそれを繋ぐ線のみで描かれた N 型糖鎖のコア構造 (Glycome Informatics [1] 参照)

 

 この表記法はConsortium for Functional Glycomics(CFG)により提唱されたものであるが、
2-2 糖鎖の名称・分類で詳細を説明する。